ビートルズの変革期のアルバム「ラバー・ソウル」
RUBBER SOUL

RUBBER SOUL

今日は彼らの変革期にあたるアルバム。「ラバー・ソウル」を紹介してみます。
なぜ、変革期なのか・・・この前のアルバムまでは世界的なスターになっていたにもかかわらず、スタジオの使用時間の制限などがあったらしいのです。このアルバムの前
まではアビーロードスタジオはまだクリフ・リチャードのほうが優先して使用することができたといいます。しかしこのアルバムを制作するあたりから、自由に好きなだけスタジオを利用できるようになった彼らは、暖めていたアイデアを試したり、自分達の音楽がライブだけでは表現しきれないことをスタジオで始めたのがこのアルバムの頃からだといえると思います。

このアルバムを全篇通して感じるのはやはりヨーロッパの香りです。彼らの音楽は初期の頃からそうでしたが、アメリカのR&Bやロックンロールのカヴァーをしても、オリジナルを凌駕して彼らのサウンドにしてしまう。Long Toll Sallyや Kansas Cityを歌うポールの黒人顔負けの声量と歌の上手さ、ノリの良さは舌を巻くほどです。でもこれはアメリカの音楽ではなくなっているような気がします。彼らが意識していたかどうかはわかりませんが、ヨーロッパの音なのです。

何曲か曲の解説をしてみます。

1曲目「Drive My Car」

最初から衝撃的な曲。いままでのポールのオリジナルにはないハードで冷たい温度感を感じさせる曲です。ジョージの間奏のギターもうねるような、今までのジョージには無かったフレーズです。

2曲目「Norwegian Wood」

イントロの印象的なシタールの音。もちろんこれがシタールというインドの楽器だと知ったのは少し後でしたが、インドの楽器を使用していながら、北欧のシラビソやツガなどの針葉樹林の生い茂った深い森をイメージしてしまうのはなぜでしょうか。彼らのサウンド作りの上手さに感心してしまうばかりです。かれらのサウンドを生み出す素晴らしい助っ人として「ジョージ・マーチン」というレコーディングプロデューサーの存在が大きかったのは広く知られていることですが、それにしてもアイデアを出していたのは彼らなのですから、いやはやすごいものです。

4曲目「Nowhere Man」

このアルバムの中では、一番今までのビートルズらしい曲といったら良いでしょうか。楽器のイントロなしにいきなりジョンのヴォーカルから始まります。とてもよい曲で大好きな曲です。何気なしに聴いているとわかりませんが、この曲のハーモニーとコーラスがすごいです。ジョンの一人2重唱にポールとジョージのコーラスが重なります。とにかくビートルズというのは曲の良さもさることながら、ハーモニーとコーラスが他を抜きん出て素晴らしいです。
ビーチボーイズのブライアン・ウィルソンがこのアルバムを聴いて大いに触発されてあの「ペット・サウンズ」という傑作アルバムを作ったのは有名な話しですが、ビーチボーイズというのもポップス系の音楽のハーモニーの変革者です。

7曲目「Michelle」

いわずと知れた名曲で、何人の歌手、演奏家がカヴァーしているかわかりません。しかし、この曲に関していえば、この声、このサウンドでなければダメです。ハイポジションでBass音が半音下降するシンプルで印象的なジョージのギターによるイントロ、そのあとのポールのちょっと抑えたヴォーカル。サビの前の2回目のくりかえしからフランス語の歌詞になるあたり、どこを変えてもこの曲の完成度が崩れてしまうような気がします。私はなぜかこの曲を聴くと、時代を少しさかのぼった古いヨーロッパの街並みをイメージしてしまいます。

9曲目「Girl」

当時この曲は上記の「Michelle」とシングルカップリングされて販売されました。なんと贅沢なシングル盤なんでしょうね。どちらをA面にしても良いほどの2曲とも傑作だと思いますが、やはりこの曲は「ジョン」の歌です。「ミッシェル」はポールの歌。ここで言う歌とは、彼らの体の中にある節(メロディー)と言ったら良いのでしょうか。才能のある作曲家は無理に作らなくても頭の中に音楽が浮かんできます。それを楽譜に移せばよいわけです。差しさわりがあるといけないので、誰とは言いませんが、日本の若者の間で一時カリスマ的存在だった人物の作る曲など何の色も感じません。彼には寄せ集めの才能しかないからです。(彼はよくパクリの名人と呼ばれていますよね)しかも最近は詐欺事件で刑事被告人にもなってしまいました(あ、これは音楽とは関係ありませんね。失礼)ちょっと余計な話になってしまい恐縮です。Ah….Girl…」というフレーズはジョンのヴォーカルもため息を入れたアンニュイさを感じさせますが、後半から徐々に力強いヴォーカルになってゆきます。ジョンの声と言うのは、独特の色気があります。後半、ジョージの弾くギターのオブリガートもジョンの歌に絶妙に重なって見事な作品になっています。

11曲目「In My Life」

バロック音楽風のそれでいて牧歌的な雰囲気を漂わせた名曲です。バロック音楽風に感じるのは間奏のピアノにあるのですが、これ、よく聞くとパッヘルベルのカノンにかなり似ているコード進行です。余談ですが、パッヘルベルの「カノン」はよくコード進行だけ借用されます。山下達郎の「クリスマス・イヴ」はそっくりそのまま「カノン」のコード進行を借用しています。さすがに彼は原曲のコード進行がわからないように上手くメロディーをのせて編曲しています。もちろん前述のパクリの名人とは達郎さんのことではありませんよ。山下達郎は才能あふれる人です。

13曲目「If I Needed Someone」

ジョージの作です。遅咲きのジョージの才能がそろそろ出かかってきた曲といえるかな。独特のジョージ節です。ジョージの才能というのはこの人の性格的な人間の良さに関わってくると思うのです。ビートルズ時代はどうしてもジョンとポールという2大個性に抑えられていた感があります。この曲は「ホリーズ」もカヴァーしています。ホリーズというと日本では「Bus Stop」くらいしかヒットしませんでしたが、なかなかのグループですよ。ビートルズ解散後、ジョージは才能を開花し、「All Things Must Pass」という3枚組みの大作で大輪の花を咲かせました。このアルバムはフィル・スペクターというプロデューサーが制作にあたり、親友であったエリック・クラプトンも録音に参加しています。

余談ですが、ジョージの顔は年齢を重ねるとともに魂レベルが高くなった顔になってきましたね。ジョージもジョンももうこの世にはいませんが、素晴らしい人達でありましたね。

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