フランス組曲-J.S.Bach

フランス組曲はバッハの作品の中では繊細で優雅な香りのする名曲です。それもそのはずと言うのもおかしいですが、バッハの二人目の奥さん「アンナ・マグダレーナ」のために書いた練習曲集の中にこのフランス組曲の中の何曲かが入っています。バッハの妻への愛情が感じられる作品ということも言えます。

フランス組曲というのはバッハ自身が付けたものではなく、後の人が命名したものですが、フランスというイメージにぴったりという感じもします。曲の構成はアルマンドやクーラント、サラバンド、ジーグといったこの時代の組曲に定型化された舞曲の形式がとられていますが、それぞれに小品でありながら味わい深い曲が、例えが悪いですが、ぎっしり詰まったとても食べ応えのある美味しいスイーツの詰め合わせという感じがします。

それぞれにとても良い曲が多いですが今日は2番のアルマンドとこのフランス組曲の中では最もポピュラーでピアノを弾く人でもバッハの作品のなかではかなり良く弾かれている5番のアルマンドをご紹介します。当時の鍵盤音楽の作品はまだピアノがなかった時代なので、オルガンかチェンバロかクラヴィコード(今のピアノに近い楽器)と楽器の指定があるものもありますが、このフランス組曲には特に指定がありません。

ただ、クラヴィコードを念頭に書かれた作品という気がするので、現代のピアノで弾いても全然違和感がありません。チェンバロで弾いた演奏も聴いたことがありますが、曲の可憐さが失われてちょっと重たい感じになってしまうと感じました。

バッハが現代に蘇ってこの曲をどの楽器で演奏しますか?と尋ねたら・・・きっと「ピアノで」と言うに違いないと思います。

最初の動画は2番のアルマンド。短調の曲ですが、なんというか心に染みわたるとても良い曲です。二つ目の動画はほぼ全曲入っている動画ですが、最初に5番のアルマンドが入っています。この5番のアルマンドは昔管理人もよく弾いていました。とても美しいメロディで典雅に流れるような音のつづれ折という感じの作品です。

バッハといえばこの人です。そう「グレン・グールド」この人のバッハのピアノ演奏はどれを聴いても素晴らしいです。

フランス組曲 第2番 ハ短調 BWV813-アルマンド


以下~クーラント~サラバンド~Air(エール)~メヌエット~ジーグ

フランス組曲 第5番 ト長調 BWV816

グレン・グールドとロマン派

グレン・グールドといえば、「バッハ」というくらい彼のバッハの鍵盤音楽の演奏には定評がありますが、グールドはなぜか多くのピアニストが必ず一度はチャレンジするロマン派の作曲家、ショパンの曲は演奏会でも弾くことはなかったし、演奏会を止めてから以降もレコーディングすることはありませんでした。

なぜか?グールド自身の言葉によれば、ショパンは感情過多で好きではないと言っていたようですが、確かにロマン派の曲というのは情緒的に流れすぎる嫌いはあります。管理人はショパンは嫌いではありませんが、こちらの気分であまり聴きたくない時もあります。

極端なことをいうと日本の演歌などと共通する、これでもかと言うくらい感情を吐露するものがあるんですね。ちょっと例えが悪かったかもしれませんが、逆に考えるとグールドの感性はどちらかというとショパンなどに近かったのかもしれません。自分の感性と近いものを人は嫌うという一面もあります。

ゆえに、バッハをあれほど敬愛していたのかもしれません。
ショパンもバッハの音楽をこよなく愛していた、ということを何かの本で読んだことがあります。

話を戻しますが、グールドが唯一ロマン派の作曲家の作品を録音したのは
ブラームスだけです。この1枚のアルバムは、ブラームスのピアノのために書かれた、バラードとラプソディと間奏曲を集めたものですが、これはグールドの少ないロマン派の演奏の中でも、極めて素晴らしい演奏です。
(他にあれば管理人の調査不足です。悪しからず)とこの記事を最初に書いた時は思っていましたが、実はなんと!グールドの弾くショパンの公式な録音があったんですね。まだ聴いたことはありませんが、ショパンの「ピアノソナタ第3番」です。いやぁ、ちょっと驚きです。

グールドは音楽の内面性を重視し、ピアニスティックで派手な演奏をしなかった人ですが(このことが彼が演奏会を止めてしまった理由のひとつだと思われます。)このブラームスの作品集でも、ブラームスのちょっと抑制された、重厚でいて、馥郁としたロマンの香りのする作品を見事にグールドの歌として昇華している気がします。

ブラームスの作品を弾いたピアニストの中ではこのブラームスのピアノ曲集は最高のものではないかという気がします。とりあえず1曲聴いてください。

【Brahms-Intermezzo Op.117-1】

曲の冒頭の内声部の主旋律がとても美しい曲です。ブラームスのピアノ作品のなかでは、小品ですがとても素晴らしい曲だと思います。この叙情的な曲をグールドは淡々とそれでいて感動的に歌い上げています。

余談ですが、グールドは生前「ジャニス・ジョップリンがエレベーターで流れてきたら耐えられないだろうと」言ったということを読んだことがありますが、ペトゥラ・クラークに対しての論考を書いたりして、ポップミュージックを全否定していたわけではないようです。要するにわがままで、好き嫌いの激しいアーティストであったといえばそれまでですが、そういったことを越えて彼のピアノの演奏は素晴らしいものがあります。

グールドは生前、ビル・エヴァンスのアルバムを何枚か所有していたらしいですが、ビルの透徹した感情に流されないリリシズムはグールドの耳にも心地よく聴こえたのでしょうか・・・・・