ショパン 24の前奏曲 op.28

ショパンの24の前奏曲といえば、シューマンなどは小品の寄せ集めのような評価をしていたようですが、管理人的にはこの曲はショパンの作品の中でも際立ってリリカルな作品だと思っています。

平均律の全ての長調と短調の曲が24曲あり、バッハに傾倒していたショパンにとっては念願の作品でもあったようです。最初にこの曲を全編聴いたのは「クリストフ・エッシェンバッハ」のピアノによるものでしたが、素晴らしさに胸を打たれました。ほとんどが短い作品ですが、可憐な小品から重厚な音作りをしたものまで色々あります。特に最初に印象的だったのがop.28-4 ホ短調の前奏曲。ピアノを弾き始めた管理人が、この曲なら弾けそうと思って実際にピアノで音を出してみてビックリ!・・・こんな短い曲なのになんて素晴らしい曲なんだ・・・と思いました。技術的には難しくないので、すぐに弾けるようになりましたが、微妙に移り変わる左手の内声部、トップのメロディラインもクライマックスの部分を除いては音の跳躍のない静的な音ですが、陰影に富んだ素晴らしいものです。

この曲、以前このサイトで紹介したジェリー・マリガンというジャズのバリトン・サックス奏者の傑作アルバム「Night Lights」を紹介した時にも少し取り上げましたが、ショパンの曲に関しては、ピアノで演奏しないと曲の良さが損なわれてしまいます。ショパンという人は、ピアノという楽器が持つ特性や響きを知悉していた稀有な作曲家で、ピアノという楽器がどう音を並べると良い響きになるのかということを感覚的に身に付けていた作曲家だと思っています。だからショパンのピアノ曲は他の作曲家のピアノ作品よりもペダルの使い方も難しいのではないかと思います。

余談ですが、ジャズピアニストでピアノの響きというものに研ぎ澄まされた感覚を持っていたのがビル・エヴァンスだと思っています。クラシックファンの人もまだ聴いたことがなければ、ビルのピアノは聴いて欲しいと思います。ジャズはちょっと・・・と言う人はソロピアノのアルバムから聴いたほうが良いかもしれませんね。クラシックの音楽家の中にもビル・エヴァンスの愛好家は沢山いて、かのグレン・グールド氏もビルのアルバムを所有していたようです。

話が横道にそれてしまいましたが、この作品28の前奏曲、ショパンの作品の中では、絵に例えると練習曲集やバラードなどは油絵の具を何層も重ねた重厚な油絵という感じですが、24の前奏曲は透明水彩で描きながら、細部まで緻密な描き方をした作品というイメージです。ショパンの作品は駄作というものは少ないですが、この前奏曲集はおすすめの作品のひとつです。管理人が最初に感銘を受けた4番の前奏曲聴いてください。またまた下手くそですが自分で演奏した動画に貼り替えました。絵はかの有名なドラクロワが描いたショパン像です。ショパンという人物の内面まで表現されているような素晴らしい絵ですね。

Frédéric Chopin – Prelude in E-Minor (op.28 no.4)

吉田秀和さんのこと

最近音楽関係者の訃報が多いですが、つい先日2012年5月22日に日本の音楽評論の草分け的存在でもあり、独自の音楽観を持っていらした吉田秀和さんがお亡くなりになられましたね。1913年のお生まれですから享年98歳。長生きですね。

吉田秀和さんと言えば管理人が20代の頃、「ピアニストについて」という今は全集になっている20世紀を代表するクラシック界のピアニストについて書かれた単行本を随分読ませてもらいました。今も管理人の書棚には大切に鎮座しています(笑)ここで取り上げられているピアニスト私が記憶しているだけでも、ルービンスタイン/ミケランジェリ/バックハウス/ホロヴィッツ/グルダ/アシュケナージ/マルタ・アルゲリッチ/エッシェンバッハ/グレン・グールド/ポリーニなどですが、管理人がレコード(CD)を持っていないピアニストは一人もいません。この中で実際に生演奏を聴いたことがあるのは、エッシェンバッハだけですが、いかにこの本に影響を受けたかがわかります。

吉田さんの書かれていることは一見難しいかな・・・と思いますが、読んでいるうちにどんどん引き込まれてしまいます。これを機会にまだ読んでいないものも読んでみようかなと思っています。今は結構文庫化されている作品も多いので、安く手に入るし、ゆっくりと楽しみながら読んでみようと思っています。

今日は先ほど名前の出たマウリツィオ・ポリーニの演奏を聴いてみましょう。管理人はこのポリーニの弾くショパンの練習曲集を聴いて、ショパンっていうのもすごい作曲家だったのね・・・・と改めて感嘆した記憶があります。

【Maurizio Pollini】F.F.Chopin -「Etude op 25 No 12 in C minor」

吉田秀和 1913.9.23~2012.5.22

名曲とイメージダウン

ショパン作曲の「24の前奏曲集」管理人も大好きなとてもよい作品です。
この曲集については、詳しく解説したいので今日はあまり詳しく書きませんが、この中の7曲目に珠玉のような小品があります。

イ長調、作品28-7という曲です。

クラシックを殆ど聴かない人でも、この曲を聴けば、あっ・・・と思う人も少なくないと思います。どうしてか?この曲かなり昔から、某医薬品メーカーの胃腸薬のCMのBGMに使われているんですね。とても良い曲なのに、なにかちょっとイメージダウンしてしまいます。クラシックの曲は著作権も無いし、使用するのは自由だと思いますが、なんだかねぇ・・・・という気もします。

この曲は以前もお話しましたが、大ピアニストの「ウィルヘルム・バックハウス」が音楽の絶妙な花といってセレクトした25曲の中にも入っています。ジェームス・ハネカーという19世紀後半から20世紀初頭にかけて優れた音楽評論を残したアメリカの音楽評論家はこの曲を【マズルカ風で自然な踊りの影絵】と評しています。まさにこの表現がピッタリの曲です。

音楽だけを純粋に聴いてみてください。素晴らしい曲です。

【Ivo Pogorelich Chopin Prelude Op 28 No. 7 】

グレン・グールドとロマン派

グレン・グールドといえば、「バッハ」というくらい彼のバッハの鍵盤音楽の演奏には定評がありますが、グールドはなぜか多くのピアニストが必ず一度はチャレンジするロマン派の作曲家、ショパンの曲は演奏会でも弾くことはなかったし、演奏会を止めてから以降もレコーディングすることはありませんでした。

なぜか?グールド自身の言葉によれば、ショパンは感情過多で好きではないと言っていたようですが、確かにロマン派の曲というのは情緒的に流れすぎる嫌いはあります。管理人はショパンは嫌いではありませんが、こちらの気分であまり聴きたくない時もあります。

極端なことをいうと日本の演歌などと共通する、これでもかと言うくらい感情を吐露するものがあるんですね。ちょっと例えが悪かったかもしれませんが、逆に考えるとグールドの感性はどちらかというとショパンなどに近かったのかもしれません。自分の感性と近いものを人は嫌うという一面もあります。

ゆえに、バッハをあれほど敬愛していたのかもしれません。
ショパンもバッハの音楽をこよなく愛していた、ということを何かの本で読んだことがあります。

話を戻しますが、グールドが唯一ロマン派の作曲家の作品を録音したのは
ブラームスだけです。この1枚のアルバムは、ブラームスのピアノのために書かれた、バラードとラプソディと間奏曲を集めたものですが、これはグールドの少ないロマン派の演奏の中でも、極めて素晴らしい演奏です。
(他にあれば管理人の調査不足です。悪しからず)とこの記事を最初に書いた時は思っていましたが、実はなんと!グールドの弾くショパンの公式な録音があったんですね。まだ聴いたことはありませんが、ショパンの「ピアノソナタ第3番」です。いやぁ、ちょっと驚きです。

グールドは音楽の内面性を重視し、ピアニスティックで派手な演奏をしなかった人ですが(このことが彼が演奏会を止めてしまった理由のひとつだと思われます。)このブラームスの作品集でも、ブラームスのちょっと抑制された、重厚でいて、馥郁としたロマンの香りのする作品を見事にグールドの歌として昇華している気がします。

ブラームスの作品を弾いたピアニストの中ではこのブラームスのピアノ曲集は最高のものではないかという気がします。とりあえず1曲聴いてください。

【Brahms-Intermezzo Op.117-1】

曲の冒頭の内声部の主旋律がとても美しい曲です。ブラームスのピアノ作品のなかでは、小品ですがとても素晴らしい曲だと思います。この叙情的な曲をグールドは淡々とそれでいて感動的に歌い上げています。

余談ですが、グールドは生前「ジャニス・ジョップリンがエレベーターで流れてきたら耐えられないだろうと」言ったということを読んだことがありますが、ペトゥラ・クラークに対しての論考を書いたりして、ポップミュージックを全否定していたわけではないようです。要するにわがままで、好き嫌いの激しいアーティストであったといえばそれまでですが、そういったことを越えて彼のピアノの演奏は素晴らしいものがあります。

グールドは生前、ビル・エヴァンスのアルバムを何枚か所有していたらしいですが、ビルの透徹した感情に流されないリリシズムはグールドの耳にも心地よく聴こえたのでしょうか・・・・・