若生りえさんと細野よしひこさんのライブ

10月の月末31日にジャズヴォーカリストの若生りえさんとジャズギターの細野よしひこさんのデュオというちょっと珍しいライブ演奏を聴きにいきました。

ギター1本の伴奏でどんな歌が聴けるのか、楽しみにして行きましたが、これがまったく期待を裏切らない、というか、素晴らしい歌と演奏でした。小さなダイニングバーでの演奏だったので、ちょっと狭かったけど、一番前の席でかぶりつき(笑)で聴くことができました。

りえさんの歌は相変わらずパワフルだけどセンシティブ、今回はポップス系の曲もあってなかなか面白かったですが、やっぱり私の目と耳は細野さんのギターに。細野さん前の記事にも書きましたが、私がジャズスクールに通っていた時、何度かご教授を受けた方です。といっても、私がいたクラスの先生ではなかったので、私がいたクラスの先生が何かの都合でお休みの時に臨時で教えに来られたのだと思います。実際のギターの教授ではなく、音楽理論のほうだったと思います。

細野さんのギター、ピアノやベースが入った時とは違いギター1台でベースやピアノの代わりまでするような素晴らしい演奏でした。もちろん淡々と弾かれていて、しかもものすごく洗練されたリハーモナイズ(注)によって、多分聴かれていた皆さんは、あまりの自然な美しさに聴き流してしまわれたと思いますが、ちょっとだけジャズギターをかじった(ギターは固くてかじれないけど)(笑)冗談を言っている場合ではない(^0^)人なら、この日の細野さんのギターがどのくらい素晴らしかったかわかるはずです。

伴奏のコードを弾きながら、ベース音を入れたり、ローポジションでコードを弾いていたかと思うと、瞬時にハイポジションの緊張感のあるコードを奏したり、その間にアドリブフレーズも混じったりと・・・縦横無尽変幻自在です!細野さんのギター教室に通って、また本格的にジャズギターを習いたいなとも思ってしまいましたが、今はピアノに心を奪われているので、「ギターは聴くだけでいいや」と自分を納得させています。

クラシックは楽譜という書かれた物があるので、読譜能力があれば独習でも結構弾けるようになります。表現の手本は多数の有名な演奏家がいるので、好きな人の表現を取り入れてしまうこともできます。でも、ジャズは教則本などもありますが、独学では無理かなぁ・・・などとも思います。ただ、強烈に耳の良い人でそれを楽器で表現できる技術のある人ならコピーから学ぶこともできますが、こんな人は極稀な人で、こんなことのできる人はプロの演奏家になっています。

細野さんのギターの話ばかりになってしまって恐縮ですが、当日は「B面のりえさん」というりえさんご自身が言われたテーマにふさわしく、日本の曲とかポップス系の曲が多く演奏されました。よく、ジャズの曲と言う人がいますが、純然たるジャズのために書かれた曲ってほとんどありません。ジャズ演奏家やジャズ歌手がよく取り上げる曲というのはありますが、ジャズというのはどんな曲でもジャズになってしまうのです。極端な話が日本の民謡だってジャズになります。曲はあくまでも素材という感じです。もちろんその素材の良し悪しは当然ありますが。

今回演奏された曲の一例を挙げると、来生たかおさん作曲の「マイ・ラグジュアリー・ナイト」日本語の歌ですがなかなか美しいメロディーのバラードです。原曲も良いですが、こういう綺麗なメロディーの曲は、編曲によっては逆に安っぽくなってしまいます。細野さんのジャズのスピリットの効いたアレンジで、ものすごく原曲の良さが引き出されていました。歌も昔「しばたはつみ」という女性歌手が歌っていましたが、りえさんの歌のほうが断然良いです。

もう1曲ウイスキーのCMで使われていた曲。メロディーを聴けばほとんどの人が知っている曲だと思います。単純な5つくらいしかコードのない曲ですが、これもリハーモナイズされてとてもモダンで洗練された曲になっていました。

当日の曲目の中で「Johnny Guitar」という、あの大歌手の「ペギー・リー」の作詞、ヴィクター・ヤング作曲の超有名曲がありました。この曲、普通に演奏するとちょっとメロディがメロウ過ぎる(駄洒落か(笑))きらいがあります。でもこの日の演奏は歌も演奏もメロウ過ぎず素晴らしかったです。間奏の細野さんのアドリブも圧巻でした。この他の曲も感想を述べたい所ですが、あまりにも長くなってしまうし、音楽は100の言葉を並べるより聴いてもらうのが一番だといつも自分で言っているので、このあたりでやめておきます。

もちろんりえさんの歌も、ご自分で訳詩をされて、とても歌詞を大切に歌う方なので、曲の表現力も素晴らしいものがあります。ちょっと余談ですが、りえさんって、とても明るくポジティブな方。曲間のトークもとても面白いです。美人でスタイルも抜群なのに、ちょっと2枚目半ぶりを発揮するところが良いんですね。とても楽しい気分にさせてくれる人です。りえさんのライブ聴いたことのない人はぜひぜひ、聴いてほしいなぁ・・・と思っています。

今日は当日のお二人の写真を掲載させていただきます。楽しい時間をどうもありがとうございました。

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※(注)原曲にないコードを挿入したり、和音にテンションノートというベースとなる和音を構成する音以外の音を入れたりすること。こうすることによって、ありきたりの和音がとても緊張感のある響きになったり、モダンな美しい響きになったりします。この辺がジャズの醍醐味でもあります。

「GETS/GILBERTO」・・・夏おすすめジャズ

先日このサイトにも度々登場していただいているジャズシンガーでフルーティストの若生りえさんのブログにコメントをしたら、そのレスで「夏おすすめジャズを・・・」なんてレスをいただいてしまったので、りえさんファンの管理人はすぐその気になって、夏おすすめアルバム紹介ということに相成りました(笑)

夏といえば、やっぱりこれですよね、「ボサノバ」。純然たるボサノバもいいんですが、ジャズとボサノバの融合・・・ここまで言えばジャズファンならすぐにピンとくるあれです、あれ・・・え~と名前が出てこない(わけはないです^^;)そうスタン・ゲッツとジョアン・ジルベルトのコラボアルバム「GETS/GILBERTO」です。

他ジャンルの人どうしのコラボアルバムということで、録音の時は結構緊張感があったというエピソードもありますが、その橋渡し役をしたのが当サイトにも度々名前の出てくるブラジルの国民的音楽家「アントニオ・カルロス・ジョビン」です。今にして思えば豪華なメンバーですね。このアルバムはアメリカでも大ヒット作になりました。でも、やはりこのアルバムを素晴らしいものにしているのはスタン・ゲッツのサックスだと思いますね。改めて聴いてみてもやはりゲッツのサックスは冴えてます。歌心溢れる、それでいてクールなスタン・ゲッツのサックス、良いですね。

今日は超有名曲「イパネマの娘」ではなく、管理人の大好きな曲、アントニオ・カルロス・ジョビンの名作「So Danco Samba」を聴いてください。

Stan Getz -Joao Gilberto 【So Danco Samba】

Joe Pass-「Unforgettable」

最近、ジョー・パスの記事が多いですが、改めて彼がとてつもなく素晴らしいギタリストであるということを再認識しました。つい先日パスの「Unforgettable」というアルバムを購入しました。有名なスタンダード曲をガットギターのソロで演奏しているものですが、ギター1本でこれだけ弾ける人はこの人をおいていないのではないかと思います。

ジョー・パスが管理人のギターをすっと手に取り、自分の前で弾いてくれているような・・・そんな親近感と贅沢な感じの味わえる演奏です。全編バラード調の曲が多いですが、適度な緊張感もあり本当に素晴らしいです。パスは自分のことを生涯「ギターの芸人」なんて言っていましたが、パスこそ真のアーティストだと思います。ちょっと余計なことを言いますが、日本のアイドル歌手やニューミュージック系の歌手などを、テレビ番組などで紹介する時に「今日出演のアーティストは・・・・」などと言っていますが、彼らをアーティストなんていうのはちゃんちゃら可笑しいですよね。と、今日はちょっと辛辣なことを言ってしまいました。

ジョー・パスは、ジャズ・ギターソロの可能性を広げた稀有なギタリストと言えるのではないでしょうか。クラシック系のギタリストもこのパスの演奏を完全コピーして楽譜に興せば弾けるとは思いますが、それでは全然面白くないのです。パスは弾きながら自然にアドリブもできるし、その時の状態で同じ曲を弾いても違ったものになるはずです。以前ビル・エヴァンスのソロピアノを完全コピーして同じように弾いたクラシックピアニストがいましたが、やぱり、どこか面白くないのです。ジャズはコピーしたものはもうジャズではなくなるような気がします。

このアルバム「Unforgettable」管理人の愛聴盤のひとつになりそうです。ギターが好きな人、クラシックギターの愛好家にもぜひ聴いてほしいアルバムです。

【Unforgettable】-Joe Pass

Joe Pass-Unforgettable

1. My Romance
2. Very Thought of You
3. I Cover the Waterfront
4. Isn’t It Romantic?
5. Walkin’ My Baby Back Home
6. Autumn Leaves
7. ‘Round Midnight
8. I Should Care
9. Unforgettable
10. Don’t Worry ‘Bout Me
11. Spring Is Here
12. Moonlight in Vermont
13. April in Paris
14. Stardust
15. You’ll Never Know
16. After You’ve Gone
17. I Can’t Believe That You’re in Love with Me

アルバムに収録されている曲も超有名曲ばかり、こんなアルバムが1,000円しないなんて、
すごく得した気分です。

ギター・ソロというのはちょっとジャズでは特殊な世界。ジョー・パスがいかに優れたジャズギタリストであるか、ちょっとギターという楽器をやったことがある人ならわかる超素晴らしいベースとドラムスの入ったトリオによるライブ映像を貼っておきます。曲はビリー・ストレイホーンの名曲サテン・ドールです。コードが入る演奏の箇所では右手は指で弾き、ホーンライクな急速調の力強いアドリブをする時にはピックに持ち替えたり、しかも、ピックをポケットから出す間も左手の指でタッピングをしながら音繋ぎ・・・!もう、縦横無尽、自由自在です。途中でわざとデタラメフレーズを弾いて、観客を笑わせたり、まさにギターの芸人+ギターの芸術家です。もう、故人なので、こういう貴重なライブ映像が見られるのは本当にありがたいですね。

【Satin Doll】- Joe Pass Trio

♣link: サテン・ドールと作曲者のビリー・ストレイホーンについての詳しい解説は本ブログにもたびたび登場するジャズボーカリストで訳詩もされている若生りえさんのブログもご覧になってみてください。

【Satin Doll】- Joe Pass

若生りえ&細野義彦カルテット

4月7日、銀座スイングシティで若生りえさん(Vo)のライヴを聞いた。
同行者はりえさんのことを教えてくれた、このブログでもよく
コメントを書いてくれているポロマーニさんと、Sanmabeさんという人と
おじさんトリオで行きました(笑)

まず、りえさんのヴォーカル。ルックスから受ける印象では、
声も細い感じかなと思っていましたが、なかなか太い声で
声量もあり、ちょっぴりハスキーというスパイスも。
ジャズを歌うにはぴったりという感じでした。
もちろん女性の声としての美しさもあり、歌の上手さも抜群。
しっかり歌詞の解釈もされているご様子で、
とても良かったです。

バック演奏のバンドリーダーの細野義彦さん。私事ですが、
この人、管理人が遠い昔ジャズスクールに通っていた頃、
何度かご教授いただいた先生です。

まともに聞いたのは今回が初めてでしたが、ビックリ!
素晴らしいギターでした。
管理人が最も好きなギタリストのジョー・パスとウェス・モンゴメリー
を足して2で割ったような奏法、それに日本人的な繊細な
感覚がプラスされているという感じを受けました。
本人の才能と、何十年もの音楽活動で培われたものと、日々の研鑽があって
こういう素晴らしい演奏ができるのだと思いました。

狭いライヴハウスなので指使いなどもよく見えましたが、
熟練した奏者というのは、ギターのフレット上の指がバタバタと
しないんですね。ものすごく早いパッセージを弾く場合でも
必要最小限の動きで無駄がない。職人技ともいえるかもしれません。

ピアノの二村希一さんのピアノもリリカルでそれでいて、力強さもあり
とても素晴らしい演奏でした。二村さんのピアノをフィーチャーした
「Body & Soul」もとても良かった。

香川裕史さんのベースもソロを聞いてたら、スコット・ラファロか!(~o~)
と思うくらい上手かった。ベースって音のピッチ(注)が甘くなる人が
多いんですが、実際海外の過去の名ベーシストの演奏をCDなどで聴くと
アドリブは上手くても、ちょっとピッチが甘いかなぁ・・・と思う人が
時々います。管理人、昔から歌手や演奏家の音程の甘さって、
すごく気になってしまう人なのです。
でも、香川さんのベースはピッチが正確で、ベースソロのアドリブも
素晴らしかった。

ドラムスの藤井学さんもとても素晴らしいドラマーでした。
もちろん、りえさんのフルートもとても良かったです

今回本当にひさしぶりに日本のジャズメンの演奏を聴いて
日本のジャズ演奏家のレベルも、ものすごく高くなっているということを
改めて認識しました。こういうことを言ってはナンですが、
かなり昔(1972年頃)ジョニー・ハートマンという名歌手が来日した時、
当時の日本のトップクラスのジャズメンがバック演奏をした
ものがブルーノートからCD化されたものがあるんですが、
なんだかやたらシャカリキになっていて、音楽的にも、
技術的にもあまり良い演奏とは思えません。

歌伴なのに、間奏のアドリブのところでは、がむしゃらに
演奏しているという感じで、歌手を盛り立てるのではなく
歌手に対抗しちゃってます。まあ、その頃の日本のジャズ演奏家
というのは、とにかく海外のレベルに追いつけ、という時代
だったので仕方のないことだとは思います。

もちろん、その当時の人たちも今は世界的になられていて、
その頃日本のジャズメンの追いつけ、追い越せというエネルギーと、
当時から現在までの年月の研鑽が現在の音楽レベルの高さになって
いるのだと思います。また今の若い音楽家たちは条件的にも
子供の頃から好きな音楽に打ち込める環境があるので、若手といわれる
演奏家はかなりレベルの高い人もたくさん出てきています。

最後にまた私事で恐縮ですが、細野さんにちょっと声を
おかけしたかったんですが、来店されていた某女優さん?と
ずっとお話されていたので、なんとなく機会を逸してしまいました。
もちろん、細野さんは管理人のことなど覚えているはずはないと思いますが、
演奏が素晴らしく、感動しました。ということだけはお伝えしたかった。
残念。

でも、りえさんとはわずかな時間の間に、結構いろいろお話ができて
楽しかったです。りえさん、とても気さくな女性で
ますますファンになってしまいました。

今回のライブ、りえさんのボーカルなしの演奏も何曲もあって、
りえさんのボーカルとダブルで楽しめてとても良かったと思っています。

やっぱり音楽は生演奏が最高です!

若生りえさんの公式ホームページ

(注)
ピッチとは音の高さのことですが、ピアノのようにある鍵盤を弾けば
正確に調律されたピアノであれば、誰が弾いても決まった音が出ます。
ギターも棹の部分(音程を決めるために弦を押さえて音の高さを変えるところ)に
フレットという金属のエッジのようなものが打ち込まれていて、
この手前を押さえれば正確な音が出せます。

ウッドベースだけではないんですが、バイオリンなどのいわゆる
バイオリン族の楽器(ヴィオラやチェロもそうです)は、フレットが無いので
自分の指で音高を決めなければなりません。特にベースは弦も太くて
張りも強いですから正確な音高を決めるのが難しいのです。
私はベースに関してはクラシックよりもジャズのベースのほうが格段に
難しいと思っています。この楽器で正確な音高と音程で早いフレーズを弾いたり
アドリブをするのですから、技術的にはかなりのハイレベルなものを
要求されるからです。

★おまけ:
日本の三味線や中国の民族楽器の二胡などもバイオリンと同じように
フレットはありません。